ピリカ・アフリカ・ブリタニカ?英国留学珍遊記

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zoom RSS すごい日本人に会った

<<   作成日時 : 2012/02/17 00:25   >>

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今日、久々に、すごいスケールの日本人に会った。こんなにアドレナリンを放出させながら生きているおっちゃんは、そうはいない。
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川口淳一郎氏。

言わずと知れた、惑星探査機はやぶさのプロジェクトの元マネージャーであるJAXAの教授である。16日、有楽町マリオンの朝日ホールで開催された朝日復興フォーラム「明日の日本へメッセージ」(朝日新聞社主催)を聞きに行き、そこで最後の講演に登場した川口氏の話に、引き込まれた。

本日のフォーラムは、本旨は「震災復興」である。なので、プログラムには被災した志津川病院の内科医菅野武さんの講演だったり、平田オリザさん、増田寛也元岩手県知事といったパネリストが参加するディスカッションなどが続いた。そのしんがりを務めたのが、川口さんだった。

一昨日に見たばかりの映画、「はやぶさーはるかなる帰還」では、川口教授をモデルにしている渡辺謙演じる山口教授が風変わりでちょっとカタブツの人間として描かれていたので、どんなものかと思っていたら、映画のイメージとは全然違った。皮肉屋っぽい感じはまるでなく、ユーモアにあふれた、相当ゆかいな面白いおっちゃんだった。

発表は、文字がいっぱいつまったパワーポイントをもとに、機関銃トークで聴衆を魅了する。とにかく聴衆を笑わせることが生きがいでもあるかのように、ワンコメントごとに、ネタを仕込んでいる。講演の冒頭に、「映画の試写会で、あれ、なんで夏川結衣さん演じる新聞記者が朝日新聞の人なんだろう?と思って主催者に質問してしまったんですが、よく考えたらスポンサーなんでしたね(笑)」と面目躍如のきわどいネタ・・・。また自分を演じた渡辺謙よりも「映画では残念ながら、江口洋介さんが一番かっこよかったですね(笑)」と落としていた。

そんなユーモアあふれる川口さんではあるけれど、講演内容はとにかく刺激的で面白かった。テーマは「科学技術が日本の再生や未来に果たす役割」というもので、正直、講演前には、「漠然とした総論を語るだけでは面白くないかもしれない」とちょっと懸念してた。

ところ、ふたをあけたら、川口さんは、歯に衣着せぬ率直なものいいで、言いたい放題。45分の講演にまさに、無数のメッセージが詰め込まれていて、メモを取るのに忙しかった。

まずは、はやぶさプロジェクトの意義を、宇宙科学に疎い聴衆(爺ちゃんばあちゃんばかり・・)に非常に分かりやすく説いた。それは一言で言えば「地球の起源を知ること」。地球のような丸い天体は、中央に強い圧力がかかっていて、重い物体はどんどん下に沈み、軽いものが浮くのだという。だから、地球誕生のキーとなる重い物質は地球の中心にあって、それを調べるのは困難なんだとか。しかし、小惑星の場合には、大きさが小さいこともあって、重い物体も軽い物体もどちらも地表に近いところにあるのだそうだ。だから、はやぶさのような探査機が、表面をサンプル採取すれば、地球では採取不可能な「重い物体」を容易に回収できるのだという(辿り着くまでが大変だけど)。そして、地球内部の様子が分かれば、それを元に地球内部の対流のメカニズムを解析することにもつながり、ひいては地震発生のメカニズムを解明することにもつながるとか。

厳密にいうと、はやぶさが到達したイトカワを調べるだけでは、足りないということで、それで2014年にはやぶさ2を再度打ち上げるということらしいが、大まかにいうと、はやぶさが成し遂げようとしたことには、そんな意味があるらしい。これまで、どれだけ記事を読んでも、ピンと来なかった「はやぶさの意味」がわずか5分くらいの解説でよくわかった(気になった)。川口教授、教育者としても凄腕であるようだ。

しかし、そこまでの解説はいってみれば、露払い。本を読んでも分かること(自分は分からなかったけど・・)。本領発揮はこれからだった。今回の講演で、川口さんが殊更強調していたのが、「イノベーションの重要性」だった。「創造的な思考のすすめ」ともいえる。

川口さんは、過去の宇宙研の先達が、いかに”変人”の集まりであったかを強調した上で、その積み重ねの上にたったはやぶさの成功について 「前人未到の挑戦だっただけに、不安があったかというと、すべてが不安だった。日本社会は一般的に”やれない理由”を探す文化。でも我々は違った。”やれる理由”を探す文化だった。やれない理由を探していたら、絶対にできなかった。当時の宇宙研は減点法ではなく加点法の思考だった。それが幸運だった」という。

創造性とは何か?イノベーションとは何か?川口さんの考え方はシンプルで力強い。「2番じゃいけないんですか?と少し前言われることがあった。しかし2番で良いわけがない。2番でいるということは格付けされるということ。(最初にやった)1番が格付けをする側。全然意味が違う。日本人は誰かが作った基準の中で一番上を目指すことには長けているが、それで満足してしまう。2番文化がしみついている。そこから脱皮できる国づくりをしていかないといけない」

「師匠についたら、師匠以上のものは作れない。ゴッホも我流だった」(棟方志功)
「見えるものは、すべて過去のもの」「これまで学んだものはすべて練習問題」 そういった心構えを持ち続けることが大事だと喝破する。3億キロ先の500メートルほどの大きさの天体に、探査機を接触させ、地球へ連れ戻す、という途方もないプロジェクト。世界で誰もやっていないことだからこそ、チャレンジングで面白いという。なんて、野心的なんだと改めて思う(ちなみにNASAは「世界で2番目」だと主張しているらしいけれど、川口さんは、「あれはただ星の周りを回って戻っただけで、全然違う。横並びでみないでほしい」と意地をにじませていた)。

はやぶさの事例を踏まえた上で、川口さんはこう結論付けた。「周りと同じことをしていては、競争力は生まれてこない。イノベーションをしないと明日の日本はない」

そして
「高い塔を立ててみないと、新たな水平線は見えてこない」と、特に日本の若い世代にチャレンジ精神をもってほしいと叱咤した。「はやぶさは日本人のポテンシャルを示し、自分達にも創造できるのだという、自信と希望を気づかせることができたと思う」。

マシンガントークだったこともあるけど、その強烈なメッセージに圧倒された。確かに何十年、何百億円もかけて、博打ともいえる小惑星探査機を飛ばすような生き方をしている人からしてみれば、ちょっとした失敗にしり込みして、挑戦を避けるような生き方は、勿体無く映るのかもしれない。2番文化が絶対にだめとは思わないけれど、1番になろうとしないでいたら、永遠にイノベーションはやってこないであろうことは、自分にも分かる。いまは、なんとか過去の遺産で生きていられる日本だけど、そのままこれからも生きていけるかは分からない。インドや中国には、貪欲に一番を目指してなりあがろうとするパワーがある。世界の最前線で生きる研究者だからこそ、不甲斐なくもうつる昨今の多くの日本人に、物足りなさを感じるのだろう。与えられた枠組みの中で、大した挑戦もしないで生きている筆者にとっても川口さんの言葉は、厳しくも温かいメッセージとして反響した。

何もスティーブジョブスに執心しなくとも
日本にもすごい人がいるもんだ。有楽町まで出向いた甲斐があった。

追記
どこかの大学で講演した際に、学生から「過去の文献だけでも膨大な量があり、読みきれない。一体どんな風に勉強したらいいんですか?」と聞かれて、「典型的な日本人学生の質問」だとガッカリしたそうだ。その回答が下のパワポという。与えられるものを読んだり、こなしただけで、何かをしたと思い込む心性こそが、イノベーションの最大の障害だということか。受身の教育ばかりを受けてきた日本人には、高いハードルかもしれない。
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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
私も挑戦がしたくて、南スーダンに来たのに、
前例のない大変な案件の担当になって、
この1ヶ月大変でくじけそうになっていたよ。
自分の求めていたチャレンジって何なのか、分からなくなってたけど、
周りと違うことをすることこそがチャレンジで、
自分は自分が求めていた、究極の挑戦を与えられたんだと思った。
すべてが不安でも、実現することだけを考えて取り組めばいいんだね。

何だか元気が出ました。
赴任して1ヶ月、辛い時期は過ぎ去ると信じて頑張ります。
Osa
2012/02/17 04:37
>学生から「過去の文献だけでも膨大な量があり、読みきれない。一体どんな風に勉強したらいいんですか?」と聞かれて、
状況がわからないんでなんとも言えないですけど、それは『どうやって拾い読みするか?』って事を聞いてるんじゃないですか?どういう論文こそ読むべきか、逆に読むべきではないか、さらに、どうやって人に読まれる論文を書くのか。自分に必要な文献をちゃんと把握して、探して、必要な情報だけを短時間で抽出する技術ってそれなりに経験が必要だと思いますよ。特に、問題集を解いて大学入試を終えただけの大学生にそういうテクニックがないのは当然で、そこから数年でいかに研究のいろはを教えるかが教育者じゃないんですかね。
める
2012/02/17 08:34
Osa
osaがいる場所は本当にチャレンジングな最前線だね。そういった場所にいない自分には分からないことも多いけれど、osaみたいな人が川口さんのような人の姿勢から示唆されるものは多い気がする。むやみに、「がんばれ」ともいえないけれど、OSAが粘り強く先に進んでいけることを祈っています。また帰ってきたら、はやぶさ関係の映画とかもみてみて。南スーダン報告も楽しみにしています。


yuya
2012/02/18 15:42
めるちん
 そだね。どういった学生なのかは、こちらも分からないけれど、学生の意図と川口さんの意図はちょっと違ったのかもしれない。めるちんが言ってるような意味合いで学生が具体的なアドバイスを求めたのなら、学生は非難されるいわれはないかもね。講演でのニュアンスとしては、「(自分で考える前に)マニュアル的な便利な方法があれば教えて」みたいな感じだったかな。自分の経験上も、膨大な論文を前に、絶望しそうになる学生の気持ちは実によく分かる(つい一年前同じ状況にいたし)。そういう意味では川口さんもちょっと、研究者として優秀であるからこそ、学生側の立場を汲み取りきれてないのかもね。まあ、でもそこらへんは、講演だけではよく分からないので、それ以上は差し控えておくわ。
yuya
2012/02/18 15:47

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